あわてて解約しないで! 生保破綻への対処法

あわてて解約しないで! 生保破綻への対処法

ファイナンシャル・プランナー 山田 静江

 サブプライム問題の影響で、とうとう生命保険会社の破綻(はたん)が起こってしまいました。大和生命の保険契約者はもちろんですが、他の保険会社の契約者で「大変だ、解約しなければ」とあせっている人も多いのではないでしょうか?

 株価暴落、為替の大幅な変動で、金融資産を減らしている人は多いでしょうから、これ以上損をしたら大変、とあせる気持ちはわかります。しかし、生命保険は万一のときに大きな保障が得られるという点で、他の金融商品とは異なる性格のものです。加入時には告知や審査があるため、健康状態によっては再加入できないかもしれません。今、一番やってはいけないのは、よく検証せずにあわてて解約してしまうことです。

●契約は契約者保護制度で守られている

 日本で保険を販売している生命保険会社はすべて、「生命保険契約者保護機構(保護機構)」に加入することが、保険業法で定められています。保護機構は保険会社が破綻した場合に、契約者の保険契約が続けられるように、破綻した保険会社の保険契約の移転や支払いにかかる資金援助や、更生手続きの際に契約者が行うべき手続きの代理を行います。

 保護機構の「生命保険会社の契約者保護制度」の概要は以下のとおりです。

◇保険契約は引き継がれる

 破綻会社の保険契約は、新しい保険会社に引き継がれるか、または契約を承継する子会社や保護機構によって引き継がれます。ただし、保険金額の減額など、契約の一部が変更される可能性があります。

◇破綻時の責任準備金等の90%まで補償(※1)

 逆に言えば、責任準備金の減額は最大でも10%ということです。責任準備金とは、保険会社が将来の保険金等の支払いに備えて、保険料等を積み立てているもの。過去の破綻における実績によると、個人年金や養老保険、終身保険など貯蓄性の高い保険ほど、責任準備金が削減されることによって保険金等も大きく減りましたが、期間が短い掛け捨てタイプの保険契約(たとえば10年満期の定期保険など)は、ほとんど影響を受けていませんでした。

※1:補償対象契約は、運用実績連動型保険契約の、特定特別勘定にかかる部分を除いた国内における元受保険契約で、高予定利率契約(現在の基準は3%を超えるもの)を除く。個人の一般的な生命保険契約は補償対象

 なお、高予定利率の保険契約の補償率は、
「90%-{(過去5年間における各年の予定利率―基準利率)の総和÷2}」です。

 現在の基準利率は3.0%と定められているので、たとえば予定利率が5.0%であれば、
「90%-(5.0%-3.0%)×5÷2=85%」となるようです。

◇保険料等の算定基礎となる基礎率が変更される可能性あり

 保険料等の算定基礎となる基礎率(予定利率、予定死亡率、予定事業費率等(※2)の変更が、行われる可能性があります。予定利率と予定死亡率が高いほど保険料は安く(同じ保険料なら保険金額は高く)なり、予定事業費率が高いほど保険料は高く(同じ保険料なら保険金額は低く)なるしくみです。特に貯蓄性が高い保険や契約期間が長い保険は、予定利率変更の影響が大きくなります。

※2:「予定利率」は、保険会社が資産運用により得られる収益を見込み、その分を保険料から差し引く際の割引率。「予定死亡率」は、死亡者数を予測して保険料を算出する際の死亡率。「予定事業費率」は、保険会社が見込む経費の割合

◇「早期解約控除制度」が設けられる可能性あり

 せっかく更生計画ができても、保険契約の解約が相次いで資金が流出してしまえば、計画が予定通り実行されないこともあります。そのため、破綻処理から一定期間(過去の例では10年程度)以内に解約をしたときには、解約返戻金から、解約控除という手数料のようなものが差し引かれる、ということです。責任準備金減額により減った解約返戻金が、解約控除でさらに減ってしまうことになります。

●まずは加入している保険の確認を

 簡単にまとめておくと、生命保険会社が破綻したときには、責任準備金が削減され、予定利率が1~1.5%程度に引き下げられることが多いので、貯蓄性が高い保険、予定利率が高いときに加入していた保険、長期契約の保険ほど、破綻時の処理により、保険金額が大きく減ることになります。逆に保障重視の掛け捨てタイプの保険は、保険金額が大きく減る可能性は低いといえるでしょう。

 まずは、自分が加入している保険が貯蓄重視の保険なのか、保障重視の保険なのか、確認してみましょう。

 貯蓄重視の保険であれば、中途解約(すでに破綻してしまった保険会社の契約なら、破綻処理による減額と早期解約控除による減額も加わります)による損失を受け入れてでも解約した方がいいのか、よく考えて判断してください。保障重視の保険なら、解約はより慎重に行いましょう。前述したように、健康状態に問題があれば、他社で新たな保険に入ることはできません。解約することで、現在の保障がなくなるリスクは、破綻による減額リスクより大きいのです。

 自分では判断がつかない場合、あるいは現在の保障額が適切なものかどうか確認したい場合には、保険に詳しいファイナンシャル・プランナー(FP)に相談してみてください。

 日本FP協会の日本各地の支部では、11月に「参加費無料のセミナーと相談会(FPフォーラム)」を開催します。FPによる相談は本来有料ですが、日本FP協会のFP普及貢献活動の一環として、フォーラムにおいては特別に無料で相談を受けることができるので、気軽に参加してみてください。


山田 静江(やまだ・しずえ)さんのプロフィール
 1961年東京生まれ。CFP(r)。銀行、税理士事務所、FP事務所を経て独立。お金に関する記事の監修・執筆、相談業務、セミナー講師などを行っている。娘2人。NPO法人らしさ事務局長

 私がかかわっているNPO法人ら・し・さでは、いわゆるエンディングノートの一種である「ラスト・プランニングノート」を発行しています。先月、ある新聞とテレビで取り上げていただいたところ、注文が殺到しました。日本では長らく、お金と死の話はタブーとされてきましたが、世の中の雰囲気が変わってきたということですね。10月21日には、東京都江戸川区で、NPO法人ら・し・さ主催のセミナー「人生のエンディングを考える ~ノートを書いて残りの人生を楽しみましょう~」を開催します(講師は私、山田静江です)。この分野にご興味のある方は、是非ご参加ください。
 詳しくはhttp://www.mps.ecnet.jp/rashisa/ivent.htmをご覧ください。

読売新聞で、上記の記事が掲載されていました。

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本書で紹介している各保険商品のデータは、2007年5月現在、各社がWebサイトやパンフレットで公開している情報をもとに、筆者(草野直樹)による調査や意見によって構成しています。各保険商品の詳細は時期より変更されることがあります。商品の検討をする際には、各保険会社に詳細をお問い合わせ下さい。

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生命保険のウソ・ホント

出典:
生命保険のウソ・ホント
著者:
草野 直樹
出版社:
九天社